DMG MORI、トポロジー最適化と再利用可能なワークフローを使用してロボットエンドエフェクタを再設計
DMG MORI の ADDITIVE INTELLIGENCEチームのエンジニアは、nTopology を使用してアディティブ・マニュファクチャリング用の Robo2Go のヘッドを再設計しました。この設計では、62%の軽量化と60%の部品点数の削減を実現し、ロボットのハンドリング精度は16倍向上させることに成功しました。
このコンポーネントの剛性重量比を最大化し、ハンドリンヅ精度の向上と製造コストの低減を図ることがチームの課題でした。同時に、この多機能コンポーネントには新しいロボットヘッドの外形はそのままに、空気圧システムの組み込みチャンネルとエンドエフェクタの電気コンポーネントを収納する必要がありました。
ADDITIVE INTELLIGENCEチームは、トポロジー最適化に基づく可変シェルを適用することを選択しました。そして非構造サブシステムを統合し、最適なラティスインフィルを特定するために迅速に反復を行いました。
その過程で79点あったコンポーネントは48点に統合され、重量はわずか0.7kgに、空気圧システムのシーリング箇所は20点(従来比45%減)にまで削減されました。

キーポイント
- 多機能な軽量化:機能性と剛性を高めながら、重要なシステムコンポーネントの重量と製造コストを大幅に削減します。
- シミュレーション・ドリブン・デザイン:トポロジー最適化とラティスシミュレーションを使用してプロセスをガイドし、最初から最適化された結果を生成します。
- 再利用可能なワークフロー:カラー・プロパティを入力として使用するデザイン・プロセスを作成し、複数のデザインを反復実行し、新しいアイデアをすばやくテストすることができます。
事業価値
- マルチシステム統合:システムアセンブリ全体を、AM用に最適化された単一で製造しやすいコンポーネントに統合します。
- より高性能な製品を:ロボットシステムのハンドリング精度と負荷容量を向上させ、堅牢なエンジニアリングソリューションを実現します。
- 合理化されたプロセス:貴重なエンジニアリング時間を節約し、生成および設計自動化ソフトウェアでエンジニアリングソフトウェアスタックを強化します。
Key Statistics
軽量化
62%軽量化
アセンブリの統合
コンポーネント点数60%削減
ロボットハンドリング
精度16倍
空気圧システム
シーリング箇所を45%削減
材料
アルミニウム (AlSi10Mg)
製造プロセス
LASERTEC 30 Dual SLM
バックグラウンド
DMG MORIは、金属切削加工製造装置のリーダーとして、1世紀以上にわたって高品質のCNC機械を製造してきました。過去20年にわたり、DMG MORIはアディティブ・マニュファクチャリング、自動化、デジタル化といった将来のセグメントに投資してきました。
Robo2Go 2nd Genロボットシステムは、同社のファクトリーオートメーションに欠かせない存在です。このロボットアームには最大4台のCNCシステムから一度に部品をロード/アンロードするための2つの独立したグリッパーが装備されていて、人と機械のコラボレーションを強化するインテリジェントなコンセプトが特徴です。

ADDITIVE INTELLIGENCEは、DMG MORIのアディティブマニュファクチャリング・デザインコンサルタントで、社内外の顧客と協働しています。このチームはRobo2Goシステムの、かさばるロボットヘッドを金属AM用に再設計することを任されました。
DMG MORIのエンジニアは、トポロジー最適化とフィールド・ドリブン設計の技術、そして高度なラティス構造を組み合わせることで、この重要なコンポーネントの設計を全面的に見直したのです。
nTopologyを使用することで、パワフルでユニークなアディティブデザインを実現することができました。従来のCADでは、このような部品を作ることは不可能だったでしょう。
Martin Blanke, Additive Manufacturing Project Engineer at DMG MORI
このケーススタディでは、DMG MORIのエンジニアが辿った設計プロセスに迫ります。nTopology 独自の機能を活用して、どのようにプロセスを合理化し、最適な結果を達成したかをご覧いただけます。
設計の課題
RobotGo 2nd Genは、すでに大成功を収めている製品です。しかし、DMG MORIは次世代ロボットシステムの初期設計を改良するために、機械の精度を高め、貴重な製造・組立時間を短縮したいと考えました。
もとのアセンブリには79個の部品が含まれていたため、公差、精度、組み立ては難しい作業でした。さらに、このコンポーネントの剛性と重量が、システム全体の精度と最大負荷能力を制限していたのです。
このプロジェクトの主な目標は、元のアセンブリと同じ外部形状で、コンポーネントの数と重量を減らした軽量設計を開発することでした。そのためには、元の構造体の形状を維持しつつ、内装の素材をできるだけ削ぎ落とすことが必要でした。

設計のメソッド
Martin Blanke氏とそのチームは設計の早い段階で、元の設計の重量を減らすための最良の方法として、可変シェル化とラティシングを決定しました。しかし、これらの作業をタイムリーに行うことは、従来のCADツールではほぼ不可能でした。
Martin氏は、「従来のCADシステムでは、この部品を2~3ミリの一定の厚さでシェル化することしかできませんでしたが、nTopologyでソリューションを見出すことができました」と述べています。

nTopologyのフィールド・ドリブン・デザインの機能が、このボトルネックの克服に貢献しました。ここでは、彼らが辿ったプロセスの概要を紹介します。
- まず、元設計のすべての面をCADで色分けしました。それぞれの色は、異なるサブシステムに対応しています。これは後にnTopologyの入力パラメータとして、各セクションの厚みを決定するのに使用されました。
- そして、nTopologyでCADファイルを読み込み、各セクションをシェル化してから1つのボディに結合しました。シェルの厚さは、その剛性を最大化するためにトポロジー最適化によって駆動されました。
- 最後に、部品の構造強度を高め、アディティブ・マニュファクチャリング用のサポート構造を作るために、内部ボリュームをコンフォーマル・ラティスで埋めました。nTopology のエンジニアリング シミュレーション ツールを使用して、最適なラティスを選択するために迅速に繰り返しを行いました。
色分けによる設計の自動化
DMG MORIのエンジニアは、1回限りの軽量コンポーネントを設計するのではなく、堅牢で再利用可能な最適化プロセスを開発します。 彼らの再利用可能なワークフローは、インポートされたCAD本体の、色分けされた表面に基づいていました。

まず、外部CADで各サブシステムの表面の色を定義しました。空気圧の入口と出口は青、空気圧の流路は黄、ロボットとのインターフェースは赤、取り付け部は紫、接触面は緑、外面は白です。
そして、nTopologyのカラー・プロパティを使用して関連するサーフェスを選択し、再利用可能なワークフローを開発しました。将来の反復や他のプロジェクトに使用されることで入力ジオメトリが変わっても、新しいCADファイルをインポートするだけで、最適化プロセスが自動的に再実行されるのです。
可変シェリング用のトポロジー最適化
重要な設計要件は、元の設計の外部形状を維持することでした。アームとエンドエフェクタとの接触点、空気圧システムの入口と出口、電子機器の取り付けネジ、ケーブル穴にも同様の制約があります。
トポロジー最適化を最終設計として直接使用することはできませんでした。 しかし、チームはトポロジー最適化の結果を使用して、シェルの厚さを駆動しました。

この色分けを利用して、 Martin氏 のチームはトポロジー最適化のための設計空間を自動的に定義しました。そして最適化プロセスの結果を入力として使用して、さまざまな厚さのシェルを作成しました。より多くの材料が必要なところは厚く、そうでないところは薄くと、シェルの厚みを変化させることができるようになったのです。
nTopologyを使用する上での大きな利点は、トポロジー最適化の結果を、直接または別の機能で間接的に使用できる有用なモデルに変換できることです。
Martin Blanke, Additive Manufacturing Project Engineer at DMG MORI.
このプロセスにより、部品の外観を変えることなく、トポロジー最適化による構造的なメリットの一端を把握することができました。
マルチシステム統合・機能統合
シェルが準備できたら、構造システムや空気圧システムも軽量化し、設計に統合する必要がありました。

色分けをすることで、各サブシステムに異なる一定のシェル厚を簡単に適用することができました。たとえば、空気圧の入口と出口には、空気圧チャネルよりも大きい厚さが割り当てられました。 この作業は、従来のCADツールではほぼ不可能でした。
プロセスの最後のステップは、Martin氏が ”nTopologyを使う大きなメリットの1つ “として挙げたものです。個別のシェルを生成した後は、単純なブーリアンユニオンを使ってすべてを1つのボディにまとめることができます。ブーリアンユニオンブロックは、複数のインプリシット・ボディを1つに結合し、オプションでそれらの間にフィレットの追加もできます。
剛性とサポート力を高めるコンフォーマル・ラティス
この段階では、多くの内部フィーチャがオーバーハングを持ち、金属AMプロセスでは製造できません。一般的に、このようなパーツを3Dプリントするにはサポート構造を使用しますが、その除去には手間がかかり、材料も無駄になってしまいます。
エンジニアリングチームは、部品のすべての内部領域に恒久的なサポートを設けるために、ラティス構造を採用しました。さらに、この内部ラティス構造により、部品の剛性が向上しました。

最適なラティス厚を特定するために、チームはnTopologyの統合シミュレーションツールを活用しました。この機能により、nTopology で複数の FEM およびラティスシミュレーションを自動的に実行し、結果を迅速に評価して特定のパラメータを変更し、また設計を反復して最適化することが可能になりました。
別のソフトウェアに移行してもワークフローが複雑になるだけなので、このソフトウェアの統合されたエンジニアリングシミュレーションと設計自動化機能を利用することで、Martin氏のチームはエンジニアリング時間を大幅に節約することができました。
最終仕上げと製造
これで設計は完成し、あとは製造や後加工のための最終的な詳細事項を追加するだけとなりました。
例えば、最終モデルの穴やくぼみは、アディティブ・マニュファクチャリングの際に欠陥部分を生じさせる可能性があります。チームは、これらの部分のほとんどを後から簡単にCNC加工ができる固形材料で埋めました。

LASERTEC 30 Dual SLMシステムによる39時間の金属AMと DMU 50 5軸 CNCマシンによる仕上げを経て、チームはついに、この新しい軽量設計のプロトタイプを4台完成させ、テストに臨みました。
次のステップ
現在、DMG MORIのエンジニアは、この新しいコンポーネントをロボットシステムの組み立てに使用するテストを行っています。目標は、2022年の初めまでに商業生産に到達することです。
初期のテストでは、この新しいコンポーネントの高い剛性と重量比が、ロボットシステムのハンドリング精度を16倍向上させることに貢献したことが示されました。チームは、nTopologyの同様の手法を他の同様のコンポーネントの軽量化に適用することを計画しています。
壊れないジオメトリ、再利用可能なワークフロー、シミュレーション・ドリブン設計は、アディティブ・マニュファクチャリングにとって非常に強力な設計方法です。
Martin Blanke, Additive Manufacturing Project Engineer at DMG MORI.
このプロジェクトについてもっと知りたい方は、Martin Blanke氏が最近のライブ・ウェビナーでチームの設計プロセスを詳しく説明しています。その模様はオンデマンドでご覧いただけます。